令和5年11月のご挨拶

享受する

  ようやく秋らしさを感じる日々となりました。四季の移り変わりの中にあって、皆さんはどの季節が好きでしょうか。以前この質問を受けたときに、「どの季節もそれぞれいいと思います」と答えたら、その中でいちばん好きな季節はと更に質問されたので、「秋でしょうかね」と答えました。更に理由を尋ねられたので、欲張りの私は「勿論、秋は 食欲の秋ですから」と答えました。皆さんはどんな秋を感じておられますか。秋は「芸術の秋、読書の秋、スポ-ツの秋、実りの秋」と何か豊かな心を感じさせてくれます。

 さて「秋を楽しむ」といいますが、木々が次第に色づき、自然の移り変わりの中で生活していることを感じずにはおれないのです。「享受」という言葉を辞書で調べれば、『精神的・物質的な利益を受けて、それを味わい楽しむこと』と示されています。紅葉を楽しんだり実りの秋を喜んだりすることは、文字通り「享受する」ことです。それは、秋という自然のサイクルによってもたらされる恩恵を私達は受けているのでしょう。最近ではこの四季の変化がある日本でも、気候変動の影響で徐々に春や秋が短くなってきたように感じられます。

 世界の情勢を見ると各地域での戦争のニュ-スが報道されています。毎日失われる「いのち」を考えると、一日も早い停戦と解決が望まれます。我が国は第二次大戦後は平和主義国として今日を迎えています。「平和を享受」しているのですが、それが当たり前になって、「平和ボケ」になっていないかが問われます。多くの人が今受けている苦しみにどれだけ共感できているかが問われていると思います。

 季節の移り変わりを享受することも、平和を享受することも、その利益がどのようにして私にまで運ばれてきたかを尋ねなければならないのでしょう。今日の平和は、戦争での多くの犠牲者の上に成り立っていることを忘れてはならないでしょうし、また、自然の恩恵を受けることは、私達の生活のあり方に対しての問いかけを伴うのではないでしょうか。

 「享受」することはただ単に楽しむということだけではなく、いただいていることの大きさに出遇うことではないでしょうか。