令和元年11月のご挨拶

身命をかえりみずして

9月末から10月にかけて、関東東北地方は大変な災害が起こりました。一度被災された地域に、再び災害が起こり、改めて自然の厳しさと、人間の無力さを知らされました。被災された方には心からお見舞い申し上げます。

 さて、10月23日(水)に湖西中学1年生の生徒さんの校外学習に「学校サポ-タ-」として参加しました。「ふるさとウォ-ク」と名づけられ、JR北小松駅から湖西中学校までの20kmを歩く校外学習でした。依頼を受けたときは少し不安がありましたが、生徒さんとおしゃべりをしながら楽しい時間を頂きました。歩いているといろいろなことが頭に浮かび、遠く鎌倉時代の人はわらじで歩いたことを思い、『歎異抄』の一節に心が移っていきました。

 親鸞聖人の御在世の頃のことが『歎異抄』には次のように書かれています。「おのおの十余か国のさかいをこえて、身命をかえりみずして、たずねきたらしめたもう御こころざし、ひとえに往生極楽のみちをといきかんがためなり。」と。関東の門弟が信心の問題を問うために、はるばる京都の親鸞聖人を訪ねられたときのことが語られており、常陸国から下総、武蔵、相模、伊豆、駿河、遠江、三河、尾張、伊勢、近江、山城まで関所を越えて20日余りの日程で旅をされたというのです。

 今日では便利な時代となったために、余り苦労せずに移動することができ、地球のどこにでも短時間で行くことができます。しかし、身命をかえりみずして問うべき問いを大切にしているかと言われると、応えられないのです。熱意を持って「問い」に向かわなければ、本当に大事なことが分からないと思います。

 東本願寺の塀には、「生まれた意義と生きる喜びを見つけよう」というスロ-ガンが掲げてあります。